友人が10:0の割合で被害者となり、怪我をしてしまう事故が起きました。
でも、その後すぐに現場に来た警察の方と話していたら気分が悪くなって救急車で病院へ行ったんだ。
しかも私の車は全損あつかいになったのに、相手の保険屋さんは車の修理代は50万円しか出ないっていうし。これじゃあ車の現状復旧もできないよ。
これは、本当にあった10:0事故の話です。
当初、私は10:0事故の被害者は過失が無い為、すべて保険で賠償されると思っていました。
しかし、実際は車の修理代も50万円しか出ないし、当てられ損と言わざる負えない状況。
このような状況に納得いかず、いろいろ調べてみると知らなければ損をする多くの対策があることが判りました。
今回は10:0事故の被害者になった場合に、絶対に知っておいた方が良い知識についてまとめてみたいと思います。
10:0事故は気をつけろ
自分にも多少過失のある事故よりも、10:0で自分に全く過失のない事故の方が気を付けなければ損をしてしまうケースが多いということをご存知でしょうか。
その理由は、自分の保険会社の介入が全くないからです。
自分にも過失があった場合には、相手の保険会社と自分の保険会社によって、その後の補償の相談がされます。
その際は、プロ同士で自分の保険会社の支払いが少なくなるように、知識を生かして自分に不利にならないような示談にしようとします。
しかし、10:0事故の被害者の場合は、自分の保険会社の介入の余地がありません。
この場合、自分の保険会社は介入したくても出来ません。示談にはプロである相手の保険会社と素人の被害者が行わなければならず、そのままでは被害者に圧倒的に不利です。
また、相手の保険会社は、知識的に素人である被害者に対して、いろいろと気が付かれる前に早期に示談に持ち込みたいと考えます。
これには、1つの対策があります。弁護士特約を活用しましょう!
弁護士特約とは
弁護士特約の存在自体は誰でもご存知だと思います。
自動車保険に加入するときに付加できるオプションで目にしたことがあると思います。このオプションは必ずつけておくことをお勧めします。
ちなみに先の事例の友人は、弁護士特約を付けていたため示談交渉は弁護士にお願いしました。
弁護士特約とは、事故の被害者になった際に損害に対する賠償請求を、弁護士に委任する費用や法律相談費用を、保証してくれるものです。
この弁護士特約は、今回のような10:0事故で効果を発揮します。
私は、弁護士特約は自分が事故の加害者になった時の弁護士費用を負担してくれる物と勘違いしていました。
調べてみるとこの弁護士特約、自動車保険の加入者の30%が加入しているようです。
10:0事故は事故全体の30%を占めているという統計情報もあるので、事故と加入者の割合から考えると利用した人も多いと思いました。しかし、実際の加入者でこの弁護士特約を使用したのは、わずか0.05%!
保険料を払っているにも関わらず、あまりメリットを理解されていない特約なのです。
もしくは、弁護士特約を使用すると自分の等級が下がってしまうと勘違いされたケースもあるかもしれません。しかし、弁護士特約を使用しても等級は変わることはありません。なぜならば10:0事故では被害者には過失が無いからです。
弁護士特約を使用する注意点は、自分の加入している保険会社の承諾が必要という点です。加入している保険会社の補償を受けるので当たり前ですが、多くの保険会社では会社が認めたケースのみこの特約を使用できるのです。
不明な場合は、約款に目を通すと記載されておりますので、一度把握しておいてもよいかもしれません。
弁護士を通すだけで賠償額が上がる可能性大
実は、弁護士を通して示談交渉をするのは、賠償額の面でも有利です。
10:0事故の被害者は、放っておくと車とケガの補償と少しばかりの賠償で終わってしまう事が多いのではないでしょうか。
今回のケースでは、全身むちうちにより、夜も眠れないほどの痛みがあり生活に大きな損害を与えられており、もちろんこの事故に関わる精神的なダメージもあるのですが、何もしなくてもその分の正統な補償は支払われるのでしょうか。
私個人的には、放っておいては、納得のいかない程度の補償しかもらえないと考えています。
交通事故の補償には以下の3種類の基準があります。
1.自賠責基準
2.任意保険基準
3.弁護士(裁判)基準
この基準は、示談の際の賠償を考えるときに使用されている基準です。
自賠責基準は、車に乗る人なら全員加入しなければならない自賠責保険の基準です。これが最低限の賠償の基準になります。
任意保険基準は、この自賠責基準ではカバーしきれない賠償を補償するものです。保険会社が事故の損害額を算出したもので自賠責基準よりも多くなると言われています。しかし、内容は各保険会社により違い賠償金額も明らかにされていません。
弁護士(裁判)基準は、上記3つの中で一番高額で過去の裁判事例から算出される賠償額です。この基準は日弁連交通事故相談センターが発行している「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」に発表されています。
賠償額の順番で並べると、自賠責基準 < 任意保険基準 < 弁護士(裁判)基準 となります。
上記3つの基準がある事なんて、調べる以前は知りませんでした。
ケガもなく、車が傷ついただけで相手の保険で現状復旧できる程度なら任意保険基準で十分ですが、実際に怪我をして、いつ治るかわからないムチウチのような状態だと、被害者意識では弁護士基準で賠償していただきたいと思うものです。
弁護士基準で賠償を得るには、弁護士に示談交渉をしてもらう、ただそれだけです。
これにより、弁護士の腕にもよりますが、弁護士(裁判)基準で賠償を受けることが出来ます。
どんなに知識があっても、素人の示談交渉では弁護士基準で賠償をもらうことはできません。法律に乗っ取って金銭を要求できるのは弁護士と裁判官だけと決まっているからです。
後遺障害認定で賠償額大幅アップ
交通事故で、怪我をしてしまった場合。たとえば今回の友人の様に、全身むちうちで、痛み止めをしなければ痛くて夜も眠れない様な状態になってしまったとします。
病院に通い続けて日にちが経つのに、この状態が長期間続く場合で、医師がこれ以上治療を続けても改善が見込めない状態(症状固定)となった段階に限り、まだ体に不具合が残っている場合は後遺障害認定を受けれる場合があります。
この後遺障害には1級~14級(1級になるにつれ重度)まであり、後遺症害に認定されると認定された等級に合わせて、自賠責保険だけでも最低75万円~最高3000万円の範囲で補償を受けることができます。
後遺障害認定は、被害者から申請しなければならず、このような症状が残っているのにかかわらず申請しなければ、貰う事が出来ません。
そういった点でも、被害者は頭の片隅にこの制度の事も覚えておかなければなりません。
いろいろ調べてみると、後遺障害認定は体の一部が欠損したなどの明らかに証明できるケースは良いのですが、例えば友人の様に全身むちうち状態が改善されない等のような、レントゲンやCTで明らかに判りにくい場合は交通事故の後遺障害申請に慣れた医師でなければ難しいこともあるようです。
認定は、医師に診断書類を記載してもらう必要があり、この診断書類の書き方が上手いかどうかも認定されるキーになるようです。
具体的には、証明しずらい症状を、如何に検査結果を用いて明らかに判断できる状態として証明するか、というところが大切になってくるようです。
しかし、どの病院の医師が後遺障害診断書を書きなれているのかなんて一般人には判りません。
こういった場合は、示談をお願いした弁護士に相談して、多くの事故の経験がある弁護士であれば医師も知っているので紹介してもらうのも良いかもしれません。
そういったことの為にも、示談交渉をお願いする弁護士は、交通事故を得意とする弁護士にお願いすることが大切です。
なぜ車の補償が50万しか出なかったのか
友人のケースでは、車の修理費用が50万円しか出ませんでした。そして50万円では、車を元の状態に戻すのに十分な金額ではありませんでした。
車屋さんに見積もってもらったところ、修理費用は70万円程でした。
10:0事故で、過失がないのに車の修理費が50万しか出なかったという人は、意外と多いのではないでしょうか。
この50万円というのには理由がありました。
それは、対物超過修理費用保障特約の限度額が50万円だからです。
当初、友人の話を聞いた時に、現状復旧も出来ない程度しか修理費用が出ないなんて、相手の人はどんなショボい保険にしか入っていなかったのだろうと思っていました。
しかし、調べてみると相手の方も、ある程度の特約をちゃんと付けた保険に入っていた事が理解できました。
実は、事故にあった友人の車は古い軽自動車だったので、車の評価としての時価額が低かったのです。これにより、経済的全損と言われる状態が発生し、対物超過修理費用保障特約の範囲となりその限度額である50万円が上限となってしまっていました。
これを理解するには全損と対物超過修理費用保障特約を理解する必要があります。
物理的全損と経済的全損
全損には、物理的全損と経済的全損の2つが存在します。
物理的全損は車の損傷が修理できない程度であった場合です。通常、全損と聞いて思い浮かべるのはこの状態だと思います。
しかし、もう一つ経済的全損というものがあります。
これは、車に対する補償は車の時価額に対して補償されるのですが、車が古い場合はこの時価額が著しく低い場合があります。その場合、修理費用が時価額を上回ってしまう場合があるのです。そのような場合を経済的全損を言います。
例えば、車の時価額が10万円しかないのに、修理が30万円の場合等は経済的全損となります。
対物超過修理費用保障特約とは
車に対する補償の考え方は、相手の対物賠償責任保険から、車の時価額の相手の過失割合分が補償されるのが基本です。
しかし友人のケースのように、そもそも時価額が低いと十分な修理代を保険から捻出することはできません。
それを補う特約が、ここ対物超過修理費用保証特約です。
相手車の時価を超える修理費については法律上の損害賠償責任がないため、対物賠償では補償出来ないのです。しかし、それでは無責任なので、50万円を限度に修理費用を出しますよというのがこの特約です。
私が調べたところ、なぜかこの上限は、何処の保険も50万円でした。
上記のような、経済的全損と対物超過修理費用保証特約により、修理額が50万円が限度と言われたのでした。
では、このように修理費用の元となる車の時価額とは、誰が決めたのでしょうか。
車の時価額は誰が決めている?
事故の際に補償の元となる、車の時価額ですが誰が決めているのでしょうか。
調べてみると、時価額はレッドブックというオートガイド社が発行している「自動車価格月報」を元にして算出されていました。
レッドブックは古くから刊行されており、中古車業者の間でも参考にされている物の様です。
しかし、このレッドブックには車の初年度登録から8年までの車の情報しか載っておらず、それ以上古い車については新車価格の10%程度と言われています。
また、掲載されている情報の用途も、中古車業者の間での使われ方は、査定や業者間取引で仕入れる際の店頭販売価格の目安を知るのに参考にされているようなので、現状復旧に必要な価格には到底及ばないと考えられます。
時価額を上げる方法も存在する
いろいろ調べてみると、時価額をあげる方法も存在するようです。
対物賠償の基本は、現状復旧です。法律上の賠償という言葉の解釈として、市場に出回っている同種の車と同等の価値で良いという解釈があります。
そのため、Gooやカーセンサー等で、自分の車と同じ型・年式の車がどの程度で売られているのかをリストアップして、相手の保険会社に提出すると、時価額がアップすることも多々あるそうです。
これを行う場合は、あらかじめ相手の保険会社の担当と良好な関係を保っておくことが望ましいと思います。
全損になったら戻ってくるお金もある
忘れがちですが、全損で車を廃車にした場合は、自賠責保険料が戻ってくるので、忘れずに申請しましょう。
その車が車検までまだ日数が残っていれば、その分の自賠責保険料が戻ってくるのです。
車を廃車にしただけで、申請がされると勘違いしている人も多いようです。
廃車にしたら廃車証明書をもらい、自分の自賠責保険の保険会社に必要な手続きの方法を確認しましょう。
所定の手続きが完了すると、残りの自賠責保険期間に応じた金額が返金されます。
まとめ
10:0の事故で被害者になってしまったときは、弁護士特約を付けていて納得がいかない場合は、迷わず弁護士に相談しましょう。
弁護士特約を利用することで限度額までは、無料ですし、悪いことはありません。
また、その際には如何に良い弁護士にお願いできるかが、一つのキーになります。
事故の相手が良い方だったので、納得いかないけどしょうがないと思う方もいるかもしれませんが、賠償はほとんどの場合相手の保険会社や自賠責から捻出されるので、問題ありません。
10:0の事故で、被害者が全損のケースでは、加害者側の保険の示談交渉人の立場からすると ”これはモメるな” と心構えをして交渉する案件のようです。
そのため被害者が無知である事を見せると、早期解決を計ってくるかもしれません。
また、気弱な部分に付け込まれて強引に示談に持ち込もうとするかもしれません。
10:0事故では、被害者の過失は0であり、被害者は何も悪くないのです。補償してもらえるものはしっかりと補償してもらいましょう。
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