熱中症患者が毎年増加
熱中症死亡者数の年次推移(厚生労働省統計情報部資料)HPより抜粋
人口動態統計(厚生労働省統計情報部)、および国立環境研究所の発表によると熱中症患者は年々増加傾向にあるということです。
上図は厚生労働省発表資料ですが、このグラフは死亡者数であり、熱中症を発症する患者数はこれよりももっと多くなります。
なぜ、近年になって患者数が増加しているのでしょうか。
この記事では、熱中症増加の理由とその仕組み、対策を紹介します。
熱中症が増えている理由
近年になって患者数が増加しているのは、主に2つであると考えられています。
1.温暖化による気温上昇のため
2.人間の汗腺数が減少しているため
以下で1つ1つ詳しく見ていきましょう。
1.温暖化による気温の上昇
日本の年平均気温の偏差の経年変化(1898〜2016年)国土交通省気象庁HPより抜粋
上図は気象庁調査による日本の平均気温の変化です。
少しづつですが、毎年上昇していることが分かると思います。
これは、単純に温度が上昇しているために、熱中症も増加しているということです。
2.冷房普及による汗腺数の減少
今回クローズアップするのは、こちらの原因になります。
気温が上昇した場合、私たちは汗をかいて液体が気化する吸熱反応を利用して体温を下げています。
汗は全身の汗腺から分泌されますが、その汗腺数が冷暖房の普及により減少しているというのです。
汗腺数が減少したことにより、気温が上昇傾向にあるにもかかわらず、体温を低下させる機能が弱まっているため熱中症にかかりやすくなっているという説があります。
これは本当なのでしょうか。また、その対策はあるのでしょうか。
人間の汗腺数は3歳くらいまでで決まってしまう!
ご存じでしたでしょうか。人間の汗腺数には個人差があるのです。
汗腺数が多い人と少ない人、この間にはどんな違いがあったために差が出来てしまったのでしょうか。
そこには、育った環境が汗腺数に影響を及ぼすことが明らかになっています。
下の表を見てください、国別や、出生別の汗腺数の表になります。
人種 | 汗腺数(万) |
アイヌ人 | 144 |
ロシア人 | 189 |
日本人 | 228 |
成長後タイへ移住 | 229 |
成長後フィリピンへ移住 | 217 |
タイ出生 | 274 |
フィリピン出生 | 278 |
タイ人 | 242 |
フィリピン人 | 280 |
このように、人種ではなく育った環境で汗腺数が大きく左右するのです。
つまり、涼しい国で育つと汗腺数が少なくなり、暑い地域で育つと汗腺数が多くなるのです。
同じ日本人でも、成長後に暑い国に移住しても汗腺数は多くなりません。
実は汗腺数の成長は3歳くらいまでと言われています。
これは、表中のタイやフィリピン出生の人の汗腺数が多くなっていることからも明らかです。
3歳までは適度に汗をかかせるようにしよう
汗腺数が3歳までで決定してしまうことから、過剰に子供に汗のかかない生活をさせるのは避けた方がよさそうです。
しかしながら、過度に部屋を暑くしたり、炎天下で運動を長時間させるのは避けなければなりません。
常識の範囲で、じんわり汗のかく程度の運動が必要です。
こういった観点から、就寝の際にも汗をかいているからと極端に冷房を入れるのは良くないです。
3歳くらいまでの間は冷房は、26~28度程度が最適といわれており、少しだけ汗ばむ程度が良いと言われています。
熱中症対策
もし、3歳までに涼しい地域で成長し、汗線数が少なかったとしても気候が暑くなる前に体を慣らすことで、熱中症リスクを下げることが可能です。
暑熱順化という言葉をご存知でしょうか。
暑熱順化とは、暑さに体が順応することを言い、暑さに慣れる前と後では、汗線の動きが全く違うのです。
暑さに慣れた後は、汗線の活動が高まり汗を出す際に、ナトリウムを汗線から再吸収できるようになり、ナトリウム分の少ないサラサラの汗がでるようになります。
血液循環も良くなって効率よく汗をかけるようになり、水分を補給すれば短時間で体液のバランスをとることができるようになるのです。
そのため、熱中症にかかりにくくなるのです。
もし、汗線数が少なかったとしてもこのように体を暑さに慣らすことで、対応できるのです。
体を暑さに慣らすには、汗をかく有酸素運動を一定期間行うことが有効であると言われています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
熱中症対策には、こまめに水分をとることと、炎天下での長時間の作業は避けることは今では常識です。
しかしながら、それ以外にも汗線数が減少傾向にあることが影響していることが判りました。
また、あまり知られていない事として、夏になる前に暑さに体を慣らしておく事がとても重要になります。
この記事が、皆様の生活に少しでもお役にたてばと思います。
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